都知事のマスクばかりに目がいってしまって会見の内容がなかなか入ってこなかったなまはげおじさんです、こんにちは。さくら塾のブログへようこそ。
昨日は大きなニュースがありました(都知事の会見ではないです)。それは、中学生にも、その保護者にも、塾にも、学校にも、とてもとても重要なもの。今日のブログは、このニュースについて特集します。
文科大臣の特例通知
そのニュースとは、はたして学校は今年度中に教科書指導を終えることができるか、という難問について、ひとつの答えを示したものです。こちら。
臨時休校 家庭学習内容「改めて学校で教える必要なし」文科省
各地で臨時休校が長期化し学習の遅れが懸念される中、萩生田文部科学大臣は特例として、一定の要件のもとで行われた家庭学習の内容を改めて学校で教える必要はないと通知したことを明らかにしました。
学習指導は、教師が児童・生徒に対面して行う事が原則となっていますが、萩生田文部科学大臣が記者会見で明らかにした文部科学省が全国の教育委員会などに通知した内容によりますと、特例として、一定の要件のもとで行われた家庭学習の内容を改めて学校で対面で教える必要はないなどとしています。
要件としては、家庭学習が指導計画の中に位置づけられ、教師が学習状況や成果を適切に把握することが可能となっているうえ、学校長が再度指導する必要がないと判断した場合としています。
萩生田文部科学大臣は「前提として臨時休校は、学習の遅れなどさまざまな影響も考慮して慎重に判断してもらいたいが、休校する場合は今回の通知を踏まえて家庭学習の支援を進めてほしい。感染症対策に万全を期したうえで、子どもたちの学びの保障に社会全体で責任を持って取り組むことが重要だ」と述べました。
これはNHKのサイトの記事から転載しました。まとめ直すとこうなります。
(=その単元は授業をしなくてもよい)
①家庭学習が指導計画の中に位置づけられている
②教師が学習状況や成果を適切に把握できている
③①②を踏まえて学校長の判断
休校期間ではこのような課題をやりなさいと指示し(=①)、それを提出させる(=②)ことで、授業をやったことにしちゃってもいいよということですね。
なんと!
授業をしなくてもいいの???
学校なのに!?
さて、萩生田文部科学大臣は、なぜこのような通知を出したのでしょうか。これによって、学校現場でプラスになるのはどのようなことでしょうか。
プラスになること
◎前年度の積み残しの解消
文科大臣が強くイメージしているのは、おそらく前年度の積み残しの単元でしょう。臨時休校になった3月、学校の先生から教科ごとにさまざまな課題が出されたはず。それに取り組んだことで、教科書指導を終えたことにしようよ、そうでないと学校現場は苦しいでしょ、そんな意図なのではないでしょうか。
5月の連休明けまで授業を行えなくなった今、職員室の先生方の最大の関心事は、はたして教科書指導を終えることができるかのはず。「これはありがたい」、そんな感想の先生方もいらっしゃるでしょう。
◎授業進度の回復
新学年の最初の単元、例えば数学でいえば計算ですね、これをワークなどで家庭学習させる。そうすることで、学校再開後はその単元の授業をしないでスキップしてしまう。それができれば、昨年までとあまり変わらない授業進度に戻すことができます。
これにより、年度内に教科書指導を終えることが、一気に現実味を帯びてきます。職員室から「なんとかなるかも」「いけるぞ」といった歓声が聞こえてきそうです(笑)。
◎学校運営の見通しがよくなる
何とかして教科書指導を終えねばならない。そのために、「行事を削る」「1日7コマにする」「土曜に授業を行う」「夏休み・冬休みを短縮する」など、職員室(と市教委)ではさまざまな意見が出ているのではないかなぁ・・・と想像しています。うんうん悩んでいらっしゃるのでは。
しかしこの通知によって、教科書指導を終えるイメージを教員間で共有できるようになりますから、職員室の雰囲気がガラッとよくなるのではないでしょうか。学校を秋にはこの状態にまで戻したい、年末までにはこうしたいなど、学校運営(学年運営・学級運営)に見通しを持つことができるはずです。大きなプラスです。
◎現行の学校体制を維持できる
教科書指導を終える見通しが立ったということは、3年冬の高校入試・大学入試も今までと同じように行えるということです。「新3年生の入試は出題範囲を狭くすることになるのだろうか」という声も耳にしましたが、どうやら例年通りでいくことになりそうです。
「教科書指導が終わらないなら、いっそのこと欧米と同じように9月入学へ移行するのはどうか」なんて話もありましたが、3月に卒業し4月に入学するという慣れ親しんだサイクル、学校暦とでもいうのでしょうか、それも継続することができます。これには安心する人も多いのではないでしょうか。
プラスにならないこと
いいことばかりではありません。文科大臣のこの通知、負の側面もあります。
△習熟度に不安
通常時の学習サイクルは以下のとおり。
家で予習
↓
授業で学ぶ
↓
家で復習
↓
家でワークなどによる反復
↓
ミニテスト・定期テスト
↓
家で解き直し・問題演習
明日の授業でやる内容を教科書をパラパラと見てチェック(=予習)するところから始まって、らせん型のステップを踏みながら身につけていきます。成績が低迷している人は、たいていいくつかのステップを飛ばしているものです。
しかし、この特例通知によって、
家で学ぶ
↓
家でワークなどによる反復
という2ステップのみになってしまいます。短い。はたしてこれで学習内容がしっかり身につくのか、はなはだ不安です。学校再開時に、9割以上の生徒の基礎・基本がグラグラのまま、先へ先へと進めることになりそうな気がしています。
中期的には、秋以降に授業の進めにくさを感じる先生が増えてきそうです。特に数学と英語。積み上げ型の教科ですからね。例年と同じ内容の授業だけではなく、何らかの対策を打つ必要がありそう。この2教科については、学年をまたいでの長期的な影響も出てくるかもしれません。
△学力の格差拡大
私がもっとも心配しているのが、学力の格差がさらに拡大することになるのではないか、ということです(まさに今、そういう新書を読んでいるので笑)。
家庭学習の習慣化って、本当に難しいんですよ。保護者のみなさんはライブ会場ばりにうなずいてくださると思うんですけど、まったくもって簡単な話ではない。今日はこの話を広げるのはやめておきますけど。
今回の特例通知で本当に授業をやらないことになったら、家庭学習のできる生徒とそうでない生徒、学力の格差が広がっていくかもしれません。
そして、進学塾のおじさんなので指摘しないわけにはいかない事実を。塾に通っていない生徒が不利になってしまいませんか。先ほどあげた『通常時の学習のサイクル』、塾に通っていれば満たすことができますもん。
家で予習
↓
塾で学ぶ
↓
家で復習
↓
家でワークなどによる反復
↓
塾でミニテスト
↓
家で解き直し・問題演習
今回の特例通知で本当に授業をやらないことになったら、塾に通っている生徒とそうでない生徒、学力の格差が広がっていくかもしれません。これ、マズイですよね。塾に通わせたいけど経済的に難しいというご家庭もあるわけです。経済の格差が学力の格差に直結するなんて、おかしいと思いませんか。このお話は、またいずれしますね。
△学校教育の否定につながりかねない
最初にこのニュースを知ったとき、ビックリしました。そりゃ私も考えましたよ、「こういうやり方もあるだろうなぁ、これで前年度の積み残しも4月に学ぶはずだった単元もおしまいになれば、現場はラクかもなぁ」って。でもすぐに打ち消しましたよ、「いやいやこの手はない」と。
だって、「勉強は学校で学ぶもの」という現行の学校教育体制の否定になってしまいますもんね。「学校に通わなくても、家庭学習しているならOKなの?だったらオレ学校行かない」なんて生徒がたくさん出てきそう。
今回の特例通知は、あくまでもこの非常時だけのものですぞ。念のため、最後に強調しておきますね。学校に行かなくてもOKになったというわけではありませんからね。
以上、萩生田文部科学大臣の特例通知についてのお話でした。
それでは今日はこのあたりで失礼いたします。どうぞ健やかな一日をお過ごしください。
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