本の紹介コーナー『なまはげ文庫』、第3回。
今年のベストセラーの1冊、エッセイ本を紹介します。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』、
すでにお読みの方も多いでしょうか。
中学校を通して世界が見える!?
舞台はロンドンの南にあるブライトンという街。
お話は、親子が進学する中学校を選ぶところから始まります。
……こう書くと身近な感じがするでしょ?
いやいや、これがもう、日本とえらく違うんですよ。
それではこの本のオススメポイントを◎で、イマイチなところを△で、お伝えしていきます。
◎英国の教育システムを知ることができる
エッセイ全体を貫く背景説明として、英国の教育事情についてわかりやすく紹介されているのですが、これがとても興味深いです。
●11歳から16歳までの5年間、中学校に通う
●公立でも通う小中学校を自由に選択できる
●英国の公立校は、詳細な情報を公開しなければならない
●公立校がランキング化されている
●日本にはない教科がある
3つめの「詳細な情報」とは、全国一斉学力検査の結果(!)や生徒ひとりあたりの予算など。もうこの時点でひっくり返っちゃいましたよ、私は。
いや、知りたいデータですけれども、日本ではまず期待できないレベルの情報公開じゃないですか。県内の小中学校で毎年3月に行っている『学力検査』ってありますよね。あの平均点を各校のサイトで公開します、なんてことが起きること、想像できます?
日本では、公立小中学校について、学校を自由に選択することができません。ですから、『学力検査』の平均点は、各校の指導力というよりも、その地域の基礎学力そのものを表すことになってしまいます。それはさすがに公開するわけにはいきませんよね。
そういった、「地域住民が本当に知りたいデータ」が公開されるようになると、公立校といえどランキング化、つまり序列がはっきりします。地域住民の需要の無い学校は淘汰されてしまうようです。各校の校長先生はそうならないように、そしてランキングの上位を目指して奮闘することになります。
では、通わせる側、保護者サイドはどうなるかといいますと、……
だから保護者たちは、子どもが入学・進学する何年も前からこうしたランキング表を見て将来の計画を立て、子どもが就学年齢に近づくと、ランキング上位の学校の近くに引っ越す人々も多い。人気の高い学校には応募者が殺到するので、定員を超えた場合、地方自治体が学校の校門から児童の自宅までの距離を測定し、近い順番に受け入れるというルールになっているからだ。そのため、そうした地区の住宅価格は高騰し、富者と貧者の棲み分けが進んでいることが、近年では「ソーシャル・アパルトヘイト」と呼ばれて社会問題にもなっているほどだ。
ソーシャル・アパルトヘイト。
うわぁ、そんなことが起きているのか。
いかがでしょうか。グッと興味を書きたてられる内容でしょ。これ、全16章のうちの最初の章の一部だけですから。
お子さんが小中学生だという保護者の方に特にオススメです。
◎絵空事ではない「多様性」
日本では10年ほど前あたりからでしたか、「多様性」というワードが見られるようになったのは。ダイバーシティという表現もありますね。社会科の教科書にも太字で載るようになりました。
この本の各章に共通する大きな柱が、まさにその「多様性」。英国の中学校では、実にさまざまな場面で、「多様性」について考える場面に出くわします。
そもそも生徒に共通しているのは年齢と制服、そして英語でコミュニケーションをとることくらい。あとは人種も宗教も家庭の経済状況も性的指向もバラバラな子どもたちが集まったら、そりゃぁいろいろ起きますよ。
毎日の学校生活を通じて生徒たちはいろいろなことに気づき、考え、ときに傷つくこともあるけれど、たくましく成長していきます。そこにあるのはひりつくようなリアル。お花畑のような世界ではありません。辛いエピソードもありますが、前向きで真っすぐな「ぼく(=筆者の息子さん)」に救われます。
日本の学校でも、「多様性」について考える時代はもう来ています。生徒の半分以上が外国籍という公立小学校もあります。もうしばらくすると、このあたりの小学校でも外国籍の生徒が2~3割程度にまで増えて、珍しい存在ではなくなるかもしれません。
そのとき、学校では、いったいどんなことが起こるでしょうか。また、家庭では、親子でどんな会話をするのでしょうか。
私は、日本の小中学校のこれからを想像しながら、この本を読み進めました。
◎読みやすい文体
テーマこそ骨太ですが、文章はとてもサラッとしていて読みやすいです。今年出たばかりの本なので、小ネタに使われる有名人も、私でもわかる人ばかりでした。
読み終えるだけなら、2時間程度でしょうか。
しかし、この本については、一日で1章ほどのゆったりとしたペースで読み進めてほしいです。10分くらいで読み終えて、そこで感じたことについて一日じっくり考えてみる。私はそんな読み方をしました。
△校正されてないのかな
最後に、この本のイマイチなところについて。
時期が時期なので、最近の私は受験生の作文をチェックすることが多くなっています。主語ー述語の関係がおかしいと、入試本番で大きく減点されてしまいますから、読書をしていてもそういったところが目に付いてしまいます。
この本、エッセイの形をとっているからか、一文が長く、また、それがあまり整理されていないように感じます。校正されていないのかな。
それだけがちょっと残念でした。
以上、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』についてご紹介しました。この本、ただいま某さくらっ子に貸し出し中です。戻ってきたら、さくらっ子経由でお知らせしますね。
それでは今日はこのあたりで失礼します。
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