首都圏の中高一貫進学校、最近の傾向 3

なまはげコラム
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会社内のおじさんどうしの大ゲンカを公共の電波を使ってみんなで見守るのって、なんかヘンですな。こんにちは、なまはげおじさんです。

 内房エリアのみなさまにも首都圏の受験最前線のようすを知っていただきたい、と考えてお送りしているこのシリーズ、これまでの記事はこちらです。
 

首都圏の中高一貫進学校、最近の傾向 1
こんにちは、なまはげおじさんです。さくら塾のブログへようこそ。今日は内房地区には1校もない中高一貫校のお話です。 中高一貫校は2種類あります   まずはお勉強から。  中高一貫校は、大きく分けると完全型と併設型の2タイプがあることをご存知で...

 
 ↑ 併設型の中高一貫校の間で、高校募集を取りやめて完全型に移行する学校が増えているというお話でした。渋谷幕張も含まれていましたね。
 

首都圏の中高一貫進学校、最近の傾向 2
また雨かぁ。いったいいつ梅雨明けになることやら。こんにちは、なまはげおじさんです。さくら塾のブログへようこそ。   内房エリアのみなさまにも首都圏の受験最前線のようすを知っていただきたい、と考えてお送りしているこのシリーズ、前回の記事はこち...

 
 ↑ 併設型の中高一貫校を紹介した上で、併設型中高一貫校の高校募集で入学辞退という現象が毎年起きていることに触れました。

 
 今回で一連のシリーズも一区切り。
 テーマは、併設型中高一貫校は、なぜ高校募集を取りやめるのかです。
 
 

併設型中高一貫校の苦悩

 まず、学校側がいま悩んでいることについて。業務について、授業進度について、指導と進学実績についての3つに絞ってお話します。

業務があまりに膨大すぎる

 私立の学校にとって、高校入試は一大イベントです。

 募集要項を製作し、中学校や進学塾にあいさつ回りをし、高校説明会を行うなど告知を進める。入試問題についての打ち合わせ、作成と難易度の調整、正式決定。 願書の配布を行い、出願の受付を行い、受験料の納入を確認する。受験当日にはトラブルなく受験生をマネージメントして、すぐに採点にとりかかり、歩留まり率を考慮しつつ合否を決定し、合格者に通知する。

 高校入試って本当にタイヘンなのです。業務があまりに膨大すぎます。勉強を教えることよりも、一連の営業活動で手いっぱいになってしまうのは困りものです。高校募集を取りやめることができれば、先生方のご負担は大きく減ることになるわけですね。

 可能であれば高校募集は取りやめにしてくれないか、というのが併設型中高一貫校の先生方の本音なのではないでしょうか。

 「歩留まり率」・・・合格者のうち何%程度が入学してくれるかを表す値。これを読み誤ると、新入生が多すぎて授業に支障をきたしてしまったり、反対に少なすぎて二次募集をかけることになったり、大変めんどうなことになる。今春の学附騒動や、文系の私大の繰り上げ合格騒動が記憶に新しい。
 

授業進度の問題

 中受組は6年間教育。
 大学進学実績を重視しますから、当然授業は先取りです。授業スピードもおそろしく速く、宿題や課題も相当な量が課されます。ひたすらに鍛え上げられ、そして4年目の春を迎えます。高等部1年生になり、新メンバーが加わったんだな、と遠巻きにぼんやり思うわけです。

 高受組は3年間教育。
 超のつく難問とたたかった末にようやく入学できても、中受組はすでにずっと先の単元を学習していますから、同じクラスになれるのはまだ先の話。1・2年生のうちは、クラス編成も高受組だけで固められることも多いようです。当然ですね。
 中受組に追いつくために、高受組は猛スピードで授業を進めていくことになります。高い学力を持った新入生であっても、授業についていけなくなってしまう人も出てくるようです。

 うむむ。なんとも悩ましい問題です。
 

埋めがたい合格実績の差

 併設型中高一貫校の大学進学実績、その華々しい部分はほとんどが中受組によるものです。高受組の進学実績は、あまりふるわない結果になることがめずらしくありません。

 そもそも進学実績を強く意識する中高一貫校にとって、6年間を通じての先取り学習こそが生命線です。トップギアのまま突っ走るような授業スピード、それについてこられる生徒のみを選抜して入学させ、6年間かけて磨き上げていく。先取りに次ぐ先取りで生み出した時間を使って、より広くより深い内容を学習させることができるわけです。6年間の一貫教育という強みがあってこその進学実績といえます。

 やはり高等部からの途中入学では、そうした中高一貫校ならではの素晴らしさを享受するのは難しいのでしょう。有効な解決策を見つけることのできないまま、高校募集からの撤退を選ぶ学校が増えているようです。
 
  

高受組の苦悩

 次に、併設型中高一貫校の高等部に入学した高受組の視点から、授業や学校の雰囲気などの悩みについてお話していきます。

授業についていくのが大変

 これについては上に述べたとおりですので短く。

 とにかく授業スピードが速すぎる。イメージとしては、公立高校が3年生の12月までに学ぶ内容を、およそ2年間でやっつけて、3年4月から中受組に合流するわけです。授業中に問題演習の時間をとるのが難しいですから、必然宿題や課題が大量になります。

 中学生のころは勉強が得意で心にゆとりを持って学校生活を送れていた人が、憧れの高校に入学できたのに学校生活を楽しむどころか落ちこぼれになってしまう。そういう悲しいことも起きているようです。そこには当事者にしか分からない苦しみがあるはずです。
 

ぬぐいきれないアウェイ感

 中受組は3年間かけて人間関係をつくっています。そこにあとから飛び込むわけです。人数も高受組のほうが少ないのですから、どことなく居心地の悪さを感じるのもしかたのないことでしょう。

 授業進度の関係もあり、引け目を感じるという声も聞きます。高受組からすれば、常に下に見られているような感覚を持ってしまう人もいるようです。

 楽しいはずの学校行事も、中心になるのは中受組。まあ、その学校の雰囲気や文化を築き上げてきたのは、前からずっといるメンバーですからね。

 うん、高受組のアウェイ感、わかるかも。
 
 

併設型中高一貫校が第一志望にならない理由

 前回の特集記事の中で、全国No.1の開成ですら蹴られる(=入学を辞退される)ことがめずらしくないことをデータ付きでご紹介しました。

 なぜ蹴ってしまうのか。
 言い換えますと、なぜ併設型中高一貫校は第一志望にならないのか。
 この問題について考えてみましょう。
 

クチコミが浸透してきたから

 まず考えられるのが、併設型中高一貫校へ高等部から進学するとかなり苦労するらしい、難関大学や有名大学への進学率も高受組はそこまで高くはないらしい、そういったクチコミが広く浸透してきたことではないでしょうか。
 

あの高校は名門だけど、実は・・・

 
 こうしたウワサ話はずっと昔からありました。しかし、クチコミの数が少なかったので、細かな情報をつかんでいた人はそれほど多くなかったのです。ぼんやりとしたイメージを抱いていていただけでした。

 いまやSNS全盛ですから、会ったこともないような人からもさまざまなウワサ話を聞くことができます。大量のクチコミを取捨選択して、価値ある情報を選ぶ時代です。ブランドに惹かれて高校選びをする時代ではなくなりつつあります(塾選びとも共通していますね)。

 このことが、併設型中高一貫校を第一志望にしない理由のひとつなのではないでしょうか。
 

生徒の気質が変わってきたから

 併設型中高一貫校が高受組に求めたいのは、
 

中受組なんかに負けないぞ

 
 というガッツであったり根性であったり、負けじ魂のようなものでしょう。そんなニューフェイスに中受組が良い刺激を受けてくれたらいいなぁ、そう願って高校募集を続けているはずです。

 しかし、最近は生徒の気質が変化してきました。
 とても繊細になってきているのです。

 道を歩いていて足を滑らせた程度のことを、立ち直れないほどの挫折と感じてしまう。そんなナイーブな人が増えてきているように感じます。ですから、能力は高いものを持っているのに、まわりの大人が驚くくらい簡単にあきらめてしまう。失敗すること自体に恐怖感を抱いているかのような人もいます。

 負けじ魂やハングリー精神を持った生徒は、本当に少なくなってきました。3年間ずっとしんどい思いをすることになりそうだから、中高一貫校にはあんまり進学したくはないなぁ・・・。そんな理由の受験生もいるのかもしれませんね。
 

全員いっしょのスタートがいいから

 なまはげおじさんの推理では、おそらくこの理由がもっとも大きいのではないかとにらんでいます。高校生活は全員いっしょのスタートがいい。その気持ち、よくわかります。

 すでに中受組がつくりあげた学校文化の中にあとから入れてもらうのは、なんだかいつまでもゲストのような立場になりそうですし、なかなか自分の色を出せないまま3年間が過ぎていきそうな気もしますものね。
 

 クチコミ・気質・全員いっしょ。以上3つを、なぜ併設型中高一貫校は第一志望にならないのか、という問いの解答例とします。それは違うと思うよという方、または、ほかにもあるよという方は、下のコメント欄にお願いいたします。
 
  

併設型中高一貫校のこれから

 これまで見てきたとおり、現在、併設型から完全型への移行がトレンドになっています。今後、この流れが加速するのかといえば、すべての学校でそうなるとはなまはげおじさんは考えていません。完全型に移行すると、学校側にとって非常に大きなデメリットが生じるからです。

 それは、中学受験で生徒数が十分に揃わないと、その後の経営が大変になるということ。生徒数を増やす機会が失われてしまうのは、経営者にとって恐怖でしょう。

 別の方向からライトを当てると、中学受験で十分な生徒数を揃えられるのであれば、高校受験は不要であるということでもあります。「東大合格者数ランキング」に掲載されるような実績十分の進学校であれば、生徒数確保という意味での高校受験は不要なのです。

 まとめるとこんな感じでしょうか。
 
 

 併設型中高一貫校のこれから
  上位校 → 完全型への移行が進む
  中堅校 → 高校募集の継続

 
 もしそうなっていくとしたら、これからは今以上に中学受験のウエイトが大きくなっていくでしょう。現に都心部の進学塾では、小学1年生のクラスがすでに満員御礼というところもあるそうですよ。
 

 学歴のレールに乗れるかは、12歳の冬に決まる!?

 
 このブログで、内房エリアには中高一貫の進学校がないのが困ったところだ、という記事を書いたことがあるのですが、今またその思いを強くしております。
 

内房エリアは有名大学進学に不利!?

 
 なまはげおじさんとしては、大学受験で中高一貫校の生徒と真正面からバチバチにやりあえるだけの基礎力をさくらっ子につけるべく、日々奮闘していく所存であります。清き1票をよろしくお願いいたします(選挙カーより。みなさん投票に行きましたか)。
 
 

支部総体に挑むさくらっ子のみなさん、がんばれー! 教室からエールを送りつつ、今日はこのあたりで失礼します。

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