本の紹介コーナー『なまはげ文庫』、第11回。
2024年、今年発売された本です。
タイトルがびっくりするくらい長い。『日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治 戦争というリスクを見通す力をつける』。いやいや、もうちょっと整理してください笑
P
著者はテレビ東京の豊島晋作さん。
夜中の経済ニュース番組『WBS』のメインパーソナリティです。「あ、見たことあるかも」という方も多いのではないでしょうか。
それでは、おすすめポイントを◎で、いまいちなところを△で、それぞれご紹介します。
◎今起こっている紛争がよくわかる
政治に関する本って、気軽に手に取りやすいジャンルではないですよね。わかります。でもね、この本はいいですよ。2024年の今、読むべき本かも。
全9章。
1.次の大戦は起こるのか――米中戦争の論理
2.習近平は侵略戦争を始めるか――中国と台湾侵攻の論理
3.中国の圧力に耐えられるか――台湾の論理
4.世界を敵に回しても戦う暗殺国家――イスラエルの論理
5.世界に見捨てられた抵抗者たち――パレスチナとハマスの論理
6.ウクライナ戦争の現在地――ロシアの‟侵略三年目”の論理
7.世界の終末を阻止した人々――核攻撃の論理
8.西側のストーリーと対峙する――‟新超大国”インドの論理
9.世界に通用するナラティブとは――日本という‟未完の論理”
第2章と第3章(中国と台湾)、そして第4章と第5章(イスラエルとパレスチナ)が対になる関係なんですが、ここだけでもいいから読んでほしい。わかりやすいんですよ、スッと頭に入ってくるんです。
中国が台湾侵攻の準備が整うのは(=危機が起こり得るのは)何年後になるのか。イスラエルはなぜ世界から嫌われても銃を手にするのか。日々の国際ニュースを見ていて、そういった疑問を持ったことはありませんか。
書いてあるんですよ、この本には。知りたかったことが、わかりやすい表現で。
おそらく忙しいビジネスマンが短時間でサッと読めるように工夫して書かれた本。そのため、難解な用語の濫用を避け、文の量も絞ってあります。中学生でもサクサク読み進めることが可能です。
◎もしこれが日本なら
ロシアが本格的にウクライナに攻め込んでから3年。遠い地の出来事だから気になりません、なんて日本人はあまりいないと思います。
なにせ日本のまわりには、「おはよう」の挨拶がわりにロケットを打ち込んでくる隣人もいますし、台湾島を海軍で取り囲んで軍事演習する大国もすぐそばにあります。竹島を不法に占拠している国もありますし、いまだに北方領土の返還に応じない大国もあります。
ウクライナを日本に重ね合わせてニュースを見ている人もいるのではないでしょうか。
ウクライナ戦争から、私たちが得た教訓もまとめられています(第6章)。これは日本も当てはまるなぁと私が強く感じたのは、「戦争は物量である」「他国から支援を獲得するためには、自ら血を流して勝ち続ける必要がある」の2つです。
まず、「戦争は物量である」。
精度の高い現代兵器(高精度のミサイルなど)の有無こそがこれからの時代の戦争の勝敗を分ける、なんて思ってましたが、実際は旧世代の武器を大量に使ってロシアが粘りに粘っています。現代戦においても、戦争は物量なんですね。
もし日本に万が一のことが起きて、自衛隊の出番になった場合、弾薬備蓄は数日程度しか持たない可能性があるんだとか。知りませんでした。
そして、「他国から支援を獲得するためには、自ら血を流して勝ち続ける必要がある」。
ウクライナが世界中に助けてくれと叫んでも、初めは武器の供与はなく、ヘルメットが届くくらいだったのを覚えていますか。他国から支援を引き出すためには、まず自分たちの力だけで抵抗し、「支援するだけの価値がある」ことをアピールしなければならないことを、ウクライナは教えてくれました。
こういった教訓、ただの知識で終わるとよいのですが……。
△データがない
1つ文句をつけるとしたら、データの類の資料がまったくないことでしょうか。
台湾の半導体メーカーがどれだけ価値のある企業なのか、アジアの他の企業と比較する資料がほしかったですし、ロシアの戦争下での何らかの経済指標も見てみたかったです。
でも、きっと、あえてそういった資料は全面カットしたんでしょうね。読みやすさ最優先で。
以上、『教養としての国際政治と思える本』についてご紹介しました。
おもしろそう!
読んでみたいかも!
というさくらっ子&ママンは、貸し出しますから声をかけてくださいね。
それでは今日はこのあたりで失礼します。どうぞ健やかな一日をお過ごしください。
この記事についてのコメント